スタッフKの「キネマ・ダイアリー」vol.5 『完全なる飼育 香港情夜』 | DOKUSO映画館

vol.5 完全なる飼育 香港情夜 ダンディな嗜みとして

異国でのラブストーリーは多くあります。『ローマの休日』、『ビフォア・サンライズ』、『旅情』、そして『完全なる飼育 香港情夜』…。

父は女をつくり逃げ、母はそのショックで酒浸りになり、友だちもおらず孤独な女子高生アイ。修学旅行で香港を訪れ夜に一人で抜け出しますが、乗り込んだタクシーで誘拐されてしまいます。アイは監禁され、言葉の通じない二人の生活が始まります。

『完全なる飼育 香港情夜』、見所はやはりアイのオールヌード。とはいってもエッチなだけの映画ではありません。
かなり丁寧に作られていて、まさかですが全編を通して感情移入してしまいます。主演は演技派俳優トニー・ホー。DOKUSO映画館で上映中の『ドッグ・バイト・ドッグ』『ワンナイト イン モンコック』でも見られるラム・シューが今回はキュートな役で出演しています。

『完全なる飼育』は1999年から続くシリーズもので、監禁が愛情に変化するというシリーズに共通するあらすじは松田美智子の小説「女子高校生誘拐飼育事件」をもとにしています。本作はシリーズ第3作目です。第1作目の『完全なる飼育』は主演を竹中直人、監督を「NHKを代表する演出家」であった和田勉、脚本を新藤兼人、と豪華なスタッフキャストを迎えヒット作となりました。そしてシリーズの中で特に評判がいいのが本作の『完全なる飼育 香港情夜』。当時主演の伊藤かなは17歳で、日本国内映画として撮影すると法的リスクがあったため、実質的な香港映画となったようです。

シリーズは全8作ありますが、その中で第6作目を除く各作品に竹中直人が出演し、シリーズの顔となっています。
第1作目の濡れ場の撮影の際、演出に自信がなかった和田勉監督は立ち去ってしまい、竹中直人自ら演出しながら撮影を乗り切ったようです。『完全なる飼育 香港情夜』でも竹中直人はアイの担任の先生として重要な役割を果たしています。

竹中直人が映画初主演を務めたのが石井隆監督のロマンポルノ『天使のはらわた 赤い眩暈』。それ以来竹中直人と石井隆のコンビは定番となります。

この記事を書くにあたって竹中直人のエッセイ集「少々おむづかりのご様子」(角川書店)を本棚から引っ張り出してきました。石井隆監督との思い出や『天使のはらわた 赤い眩暈』の撮影現場の様子が細かく書かれています。当時の竹中直人の鼓動が聞こえてくるような臨場感あふれるエピソードには、「やるにやれない官能の世界、僕はここに究極のいやらしさを知った」と見出しがつけられていました。

『完全なる飼育 香港情夜』、映画を愛し、官能の世界に魅了された映画人が輝く作品です。

『完全なる飼育 香港情夜』を見る

©2002 アートポート

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