スタッフKの「キネマ・ダイアリー」vol.4 『大阪ハムレット』 | DOKUSO映画館

vol.4 大阪ハムレット ねんねんちゃん〜ねんねんちゃんやで〜

名脇役で名高い岸部一徳。北野武監督作品や『相棒』シリーズ、最近では『鈴木家の嘘』などに出演しその姿を見るだけで安心する大御所俳優ですが、ミュージシャンから俳優に転身。私にはジュリーやショーケンに囲まれたベーシスト・サリーの姿も頭に浮かびます。それが本当にかっこいいのです。
ミュージシャン時代も俳優として成功してからも岸部一徳には名脇役というイメージがあります。どこか成熟していて一歩引いて静かに見守っているような佇まいが本当に本当にかっこいいのです…。

さらに1990年の『死の棘』で松坂慶子とともに主演を務め、第14回日本アカデミー賞主演男優賞・主演女優賞を獲得。そしてまた松坂慶子とのツーショットが見られるのが『大阪ハムレット』。個人的な見所はやっぱり岸部一徳です!

森下裕美のコミックを映画化した『大阪ハムレット』。
父が死んだ直後、父の弟だというヘタレな叔父が転がり込んできます。底抜けに明るい母はいい歳なのですが突然妊娠します。老け顔の長男は年上の彼女に「お父ちゃんになって」と言われます。不良少年の次男は自分の複雑な家庭環境をシェイクスピアのハムレットに例えられ、辞書を片手にハムレットを読み始めます。クラスで将来の夢を聞かれた三男は「女の子になりたい」と宣言します。とにかく問題を抱えた人間ばかりが登場するのです。
にもかかわらず『大阪ハムレット』というタイトルの映画は、ハムレットとは違い、とても爽やかなのです。
「ハムレット」という単語すら知らなかった不良少年はハムスター呼ばわりされたと勘違いしてキレたり、図書館でハムレットを借りるとき受付の女の子に「お前の本とおれの本、どっちが賢い?」と得意げに聞いたり、終始ほのぼのしていてハムレットっぽさは全くないのです。

「不良とは、一足早く大人になったものである」という一文を本で読んだことがあって、たしか中野翠さんの「映画の友人」というエッセイの中で引用されていた文章だったと思うのですが、そのエッセイにも「引用元は忘れてしまったが、」という前置きがあったような気がします。調べてみてもわからないので誰の言葉かはわからないままなのですが、その一文はよく覚えています。

ハムレットを知らなかった不良少年はシェイクスピアの悲劇に触れ、「なんで生きるか死ぬかが問題ていうとんの〜?」と頭を抱えます。

そして家族とともに導き出す答えはとてもシンプル。
生きていくのは難しいけど、とりあえず岸部一徳を応援しながら一緒にご飯食べようぜ!という清々しい気持ちで満たされる映画でした。

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©2008 「大阪ハムレット」 製作委員会

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