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『その子供』子を欲する女の激情と歪み

足が悪いことに強烈なコンプレックスを抱き、人間関係が全く上手くいかない主人公。「子供ができるくらいの大きなキッカケが必要」と語る友人の言葉をそのまま鵜呑みにして、男友達に始まり、どこの誰かも分からぬ相手にさえも子作りを持ちかける。恋愛や結婚ではなく、彼女の目的は子供を作ることだけ。

こうして概要を記しただけでは意味不明で、到底理解などできないだろう。実際に本編を見たとて理解は及ばないはずだし、仮に身近に彼女のような存在がいたのなら、大抵の人は距離を置くに違いない。傍から見れば、「頭のおかしい人」の一言で一蹴されてしまうだろう。

だが、劇中において彼女は常に本気だ。不器用で頑なで融通が利かず、0か100かの両極端な生き方しか選べない。実際に相対したら、面倒臭くて、煩わしくて、イラつくだけだろうし、世間一般的な常識やモラルから大きく逸れた行動を取っていることは間違いない。

しかし、「映画」というフィルターを通すことによって、その心に僅かばかりでも歩み寄ることができてしまう。彼女にとっては譲れない大事な問題であることが、ヒシヒシと伝わってくる。無論、彼女の選択を肯定することはできないが、周りに何と言われようと、自分で納得できない限りはどうにもならないこともある。

まだ若く、浅はかで、愚かで、未熟だったかつての自分を思い出してみてほしい。あの頃の青さと彼女の歪みには、きっと重なる部分がある。だからこそ、不快な気持ちに包まれてもなお、彼女の動向を追ってしまう。恐ろしい程までに引き込まれていってしまう。

©2006名古屋外国語大学映画部製作

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