『俺たちの世界』この世界に希望はあるのか

ミヤザキタケル

将来に希望を見出せない。生きていく理由が分からない。楽しいことが何も見つからない。不意にそんな思考に心が囚われてしまう瞬間が誰にだってあると思う。そんな心持ちの時に世の中を見渡せば、悲惨なニュースやありとあらゆる悪意にばかり目が留まり、より一層心は追い詰められていってしまう。

2006年に製作された本作は、アメリカ同時多発テロ事件やスーパーフリー事件などを下地に、高校生と大学生、2つの視点を通して物語が描かれていると思うのだが、2021年になった今目にしても、確実に響くものがある。背景にある出来事や事件は違っていても、扱っている不安や恐怖や行き場のない思いの数々は、現代において感じられるものと遜色ない。それはつまり、15年経った今でも世の中は依然として不安定で、大して変わってはいないということ。むしろ、悪化の一途を辿っていると言っても過言ではない。

その上で自らに問うことになるはず。どうやって生きていくのか。どうしたら幸福を見出せるのか。どうすれば人と人は分かり合えるのか。病んでいる時に見ると喰らい過ぎる危険があるので、平常時に見ることをオススメする。

©中島 良

ミヤザキタケル 映画アドバイザー

WOWOW、sweetでの連載のほか、各種メディアで映画を紹介。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』がバイブル。

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