特集一覧

「ある日本の絵描き少年」夢と現実の狭間で揺れる心

アニメーションで描くからこそ実現可能なPOPさと懐かしさを併せ持ち、ワクワクしながら観られる序盤の幼少期とは裏腹に、理想と現実の狭間で揺れ動く心模様、己の才能の限界、夢を追うことの代償など、徐々にシビアでリアルな現実社会を映し出していく少年期~青年期。ガラッと見え方が変わっていくその様は、まるで漫画家になる夢を持った一人の男の人生に迫ったドキュメンタリーのようでもある。

結果はどうあれ、かつて夢を追った経験がある人ならば、夢を手放し理想とかけ離れた今を生きている人ならば、今も必死に夢を叶えようと足掻き続けている人ならば、迷いながらも道を模索していく男の姿に胸打たれるものがきっとある。これまで歩んできた道を振り返り、今ある現実を見つめ直し、これから先歩んでいくことになる道筋について考えを巡らさずにはいられない。人生に後悔は付き物だけれど、思い描いた「夢」に罪はない。その「夢」を抱くに至った自分を否定する必要もない。叶う叶わないは別にして、重要なのは「夢」とどう向き合って生きていくのかということ。有名漫画家などの小ネタもあるため、マンガ好きには是非とも観て頂きたい作品ですが、自らの夢に置き換えて観ることで、誰であっても入り込むことが可能な作品です。

『ある日本の絵描き少年』を見る

©川尻将由

  • LINE
  • facebook
  • twitter