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「花に嵐」先の展開が読めない面白さ

まだ見ぬ才能に巡り会う。そんな映画祭の醍醐味を味わわせてくれる渾身の一本。アッと驚く仕掛けがあるような、一癖も二癖もあるような作品を観たいという方には、是非本作をオススメしたい。フェイクドキュメンタリーなのか、冴えない大学生が恋をする青春ものなのか、はたまたホラーやサスペンスなのか、自分が一体何を目にしているのか分からなくなる程までに思考を掻き乱されるこの物語は、とにかく先の展開が読めない。一行に着地点が見えてこない。ネタバレになるため多くは書かないが、カメラの返却期限というタイムリミットが物語の終幕を指し示していることは分かっても、登場人物たちが辿り着くことになる境地に関しては全く想像が及ばず、終始翻弄されてしまうだろう。メジャーやインディーズ問わず、こういった映画体験は中々できるものじゃない。

実際に大学の映画研究会に入った気分で物語を追うことができる没入感、常にカメラを持ち歩く中で様々な対象物を収めていく高揚感と罪悪感、常に付きまとい続ける奇妙な違和感、ありとあらゆる感覚を与えてくれる『花に嵐』に存分に翻弄されてみてください。齊藤工監督が総監督を務める『COMPLY+-ANCE コンプライアンス』にゲスト監督として参加するなど、近年活躍の幅を広げている岩切一空監督の原点がここにある。

『花に嵐』を見る

©2017 岩切一空/SPOTED PRODUCTIONS

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