4月公開の注目作『パーム・スプリングス』『SNS-少女たちの 10 日間-』 - ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょう
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4月公開の注目作『パーム・スプリングス』『SNS-少女たちの 10 日間-』 - ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょう

ミヤザキタケル

日本では年間1200本以上もの映画が公開されています(2019年の実績より)が、その全ての作品を見ることはどれほどの映画好きでも金銭的かつ時間的にもまず不可能です。

本コーナーでは映画アドバイザー・ミヤザキタケルが、DOKUSO映画館が掲げる「隠れた名作を、隠れたままにしない」のコンセプトのもと、海外の小規模作品から、日本のインディーズ映画に至るまで、多種多様なジャンルから“ミニシアター”の公開作品に的を絞り、厳選した新作映画を紹介します。

『パーム・スプリングス』4/9公開

©2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

2020年に開催されたサンダンス映画祭において、同映画祭史上最高額で配給権が売買され、米Huluでネット配信された際には、同サービス史上最も視聴された作品となり、本年度のゴールデングローブ賞(コメディ・ミュージカル部門 作品賞/主演男優賞)にもノミネートされた話題作。

アメリカ・カリフォルニア州にある砂漠のリゾート地、パーム・スプリングスを舞台に、結婚式に出席した男女が、一度眠りに落ちると結婚式の日の朝にリセットされる“タイムループ”に閉じ込められ、延々と同じ1日を繰り返していく様を映し出すタイムループ・ラブコメディ。

近年、映画に限らず、アニメや小説、そしてドラマなど幅広い媒体で目にするようになり、一つのジャンルとして確立されたと言っても過言ではないタイムループもの。その目新しさは失われつつあるのかもしれないが、タイムループという現象がもたらす興奮や感動や衝撃はいつまでも冷めやらず、人々の心を魅了して離さない。そして、目の肥えた人が溢れ返っているであろうこのジャンルにおいて、本作で描かれるタイムループは少々異質で新しい。

©2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

元の世界(時間軸)に戻るべく、試行錯誤を繰り返し、時にはループを利用することで膨大な知識や経験を獲得し、常に脱出や解決に向けた方向へと物語が進んでいくのがタイムループもののセオリーであると思うのだが、(困惑はしつつも)彼らは繰り返される日々の中に楽しみを見出し始め、別段抜け出そうと頑張らない。無論、それだけでは物語が進んでいかないので異なる展開も訪れる。そんな彼らのゆるさが、これといった特殊技能も持っていないキャラクター設定が、ループを延々と繰り返してきた男と新たにループに巻き込まれた女という組み合わせが、僕たちと何ら変わらぬ存在に訪れた出来事であると強く信じさせてくれる。そして、恋愛描写にフォーカスしていく点や、現実世界との関わり方について一考させてくれる機会をも宿している点が、この作品独自の持ち味であり面白いところ。

延々と繰り返す毎日と、僕たちが過ごす代わり映えのない毎日。その違いとは一体何か。前者においては、繰り返せば繰り返す程に、何ができて何ができないのかがハッキリとしてくる。ともすれば、劇中の彼らのように、一種の安寧のようなものを見出すことも可能なのかもしれない。どんな不幸が降りかかってくるか分からない後者に立ち向かうことと比べたら、幾分生きやすいのかもしれない。ただ、そこに可能性や希望の類いは伴わない。小さな喜びや感動にしか直面できない。想定内の出来事しか起こり得ず、想定外の出来事は起こり得ない。それはつまり、極上の喜びや感動には直面できないということ。

©2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

それが不幸であれ幸福であれ、変化が訪れるからこそ、良くも悪くも僕たちは変わっていける。

たとえ悪い状況に陥ったとしても、再び良くなれるという可能性が希望をもたらしてくれる。常に可能性と共に在るからこそ、前を向いて生きていられる。

その可能性が、時に人を間違わせもするが、過ちの果てに正しい道を歩んでいくこともできる人間の力強さを、やり直しが許されないからこそ振り絞れる勇気があることを、ループに囚われた2人の恋愛模様を通して垣間見ることができるはず。(堅苦しいことを書きましたが、気軽に観られるユーモア満載の作品です!)

『パーム・スプリングス』
4/9(Fri)新宿ピカデリー、新宿武蔵野館ほか全国ROADSHOW
監督 マックス・バーバコウ
出演 アンディ・サムバーグ、クリスティン・ミリオティ、ピーター・ギャラガー、J・K・シモンズ
配給:プレシディオ  HP:palm-springs-movie.com
Twitter: @PALMSPRINGS_JP / Instagram: @palmsprings_jp
©2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.
2020 年/90 分/アメリカ・香港/英語/カラー/シネスコ/原題:Palm Springs

『SNS-少女たちの 10 日間-』4/23公開

©2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

巨大な撮影スタジオに3つの子ども部屋を作り、12歳に見える成人した3人の女優にSNSアカウントで友達募集をさせると何が起こるのかを検証し、本国チェコで大ヒットを記録した異色のドキュメンタリー作品。

初めに言ってしまうが、見ていてとにかく胸クソが悪い。それは作品がつまらないという意味合いではなく、映し出される現実がとにかくエグイから。チェコでの出来事であるとは言え、目にするのは同じ人間が起こしている出来事であり、それは僕たちが生きるこの日本で起きていておかしくない。作品内で直面する出来事と無縁でいられる人もいるだろうが、加害者や被害者にならない保証はどこにもない。我が身に起こらずとも、大切な子どもの身に起こり得る。そう、他人事では済ませられない問題をこの作品は扱っているのだ。

©2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

チェコでは子どもの6割が親からの制限を受けずにネットを利用し、41%の子どもが他人から性的な画像を送られた経験を持つという。また、知らない人とネット上で会話をする子どもの内、1/5は直接会うことに抵抗を示さないという。

日本における状況はもう少し異なるのだろうし、家庭によってルールは様々であると思うのだが、今や僕らの生活に欠かすことのできないスマホやSNSが存在する以上、どうしたってリスクや降りかかる悪意は付き纏う。それは子どもに限った話ではなく、大人にも言えること。

そして、本作には他のドキュメンタリー作品と一線を画する特徴的な要素がある。丁寧にカット割りがされていることで、まるで物語やフェイクドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥ってしまう瞬間が多々あり、時には「警察24時」的な番組を見ているかのような瞬間さえも訪れる。要約すると、(扱っている題材もさることながら)見ていて飽きない創意工夫がふんだんになされているのである。いっそのことフェイクドキュメンタリーであったらどれだけ良いかと思ってしまうのだが、全ては現実。それがとにかく恐ろしい…。

©2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

ただ、あくまでも物は物でしかなく、全ては扱う人間の心次第。言わずもがな、スマホやSNSがもたらしてくれる恩恵は数え切れない程存在する。

真に見つめなければならないのは、卑劣で悍ましい行為へと至ってしまう人の心の弱さや脆さや高慢さ。本作で目にするような行為に至らないにしろ、悪意に蝕まれてしまう瞬間は誰にだってあるはず。

だからこそ、どんなに無縁な出来事に思えたとしても、何かしらの戒めは必ず得られるだろう。(判断はお任せしますが、お子様と一緒に観に行くのもアリな作品です。)

『SNS-少女たちの 10 日間-』
2021年4月23日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!
©2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.
監督:バーラ・ハルポヴァー、ヴィート・クルサーク 原案: ヴィート・クルサーク
出演:テレザ・チェジュカー、アネジュカ・ピタルトヴァー、サビナ・ドロウハー
字幕翻訳:小山 美穂 字幕監修:牧野ズザナ 配給:ハーク 配給協力:EACH TIME
【2020年/チェコ/チェコ語/5.1ch/ビスタサイズ/原題:V síti/104分/R-15】
公式HP: www.hark3.com/sns-10days

気になる作品はありましたでしょうか。あなたにとっての大切な一本に、劇場へ足を運ぶための一本に、より映画が大好きになる一本に巡り会えることを祈っています。それでは、ミニシアターでお会いしましょう。

©2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.©2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

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