春の矢先に失敗してもいい、いま居る場所が全てじゃない ー 『トレインスポッティング』
特集一覧

春の矢先に失敗してもいい、いま居る場所が全てじゃない ー 『トレインスポッティング』

吉田仁人

春は、目に見えて変化が起こる季節だ。卒業、入学、就職、そして引っ越しや新生活など。新しい環境となり、仲間が増える季節。

この変化のタイミングを、これまでの自分を転向するチャンスだと思っている人も少なくないだろう。

だが僕自身、それが上手くいった試しがない。学生の頃のノートが良い例だ。あれだけ初心で誓ったにも関わらず、きれいに書けているのは10ページ程度。変化したのは自分を取り巻くものだけで、肝心な根本はダラけたままな人が多いはずだ。いや、多くあってくれ。僕だけだと思いたくない。

また、転向するチャンスとは思いつつも、急激な変化は怖いものだ。「もし上手くいかなかったら…」「今のままでいた方が…」と思っても不思議ではない。

しかし、恐れることはない。今回紹介する『トレインスポッティング』があなたの肩の荷を下ろし、また、そっと背中を押してくれるだろう。

B0021ZMHNK

「失敗」は重ねたくない、しかし「成長」に必要なもの?

『トレインスポッティング』は1996年に公開されたイギリス映画。ヘロイン中毒の若者たちをリアルに描いたダークな青春映画だ。しかし、なぜか本作には見る者を興奮させる力がある。

ユアン・マクレガー演じる主人公・レントンはヘロイン中毒。彼は何度もドラッグを打ってはその度に止めると言うが、依存度の高いヘロインを止めることができない。それでも現状から抜け出そうと足掻くレントンには、どこか可愛げを感じてしまう。

なぜなら、僕もいろんなところで失敗を重ねてきたから。失敗する度に赤っ恥をかき「もう二度とこんな思いはするものか!!」と猛省するのだ。

僕からすると、失敗はトラウマだ。成功のもと、だなんてポジティブな言葉では言い表せない。そんな風に言えるのは大成功して、これまでの失敗を過去のことにできた人だけだと思う。

だから、僕は失敗する度に環境を変え、時には自分を変えた。それが僕の成長となっているのか、ただ現実逃避なのかはまだわからないが。

「勇気」じゃなく「憧れ」を力にしたが…

僕がこれまで生きてきた中で、一番の決心と言えるのは、中学3年生の夏のこと。芸能活動に本腰を入れたかった僕は、家族に頼み込んで上京した。

ここでの失敗は、同級生に引っ越し前日まで上京することを伝えなかったこと。当時の僕の頭の中には東京のことしかなかったのだ。

ようするに、変わるための「勇気」がなかったのだ。ただ「憧れ」て、上京するに至ったと表現するのが正しい気がする。

実際、多くのものを失くしてしまった。でも、新しい環境と仲間を手に入れたことは事実で、その上に今の僕があることも真実。本作のレントンのように、振り返ってみて、これで良かったと思えれば、それでいいからだ。

『トレインスポッティング』は、僕たちの日常とはかけ離れている部分も多い。それでも、物語で描かれる「核」に共感し、明日への原動力を感じられるはず。

レントン以外にも個性的な人物が多く、個性、音楽、ストーリー、どの面から見ても、僕がこれまで見てきた映画の中でトップクラスに衝撃を受けた作品。この季節に、ぜひ見ていただきたい。

  • LINE
  • facebook
  • twitter
マガジンもっと見る