子どもが大人になる瞬間に立ち会う映画『ビッグ』を見てほしい

片山萌美

2020年10月1日に私は20代を終え、30代に突入しました。

まだまだ若いと言ってもらえたり、もう大人だねと言われたり。

心の中はあまり学生時代と変わらないのに、年齢とは不思議なものです。

大人になるってどういうことなのかしら。

サンタクロースからプレゼントをもらえなくなったら?

お年玉をあげるようになったらかしら。

映画『フック』のようにピーターパンを忘れること?

空を飛ぶことを忘れ、想像力を失うこと?

いや、もっともっと深く。

映画『ビッグ』のように愛を知ってしまったら...?


ふたつの映画の名前が出てきちゃった。


打ち合わせでは『ビッグ』のみだったけど、『フック』も大好きな映画。

かつて自分がピーターパンであったことを忘れ、仕事中毒の大人になったピーター(ロビン・ウィリアムズ)が、再度ネバーランドに行き、自分を取り戻す物語。

大人になり想像力を失っているので、空を飛ぶこともできなければ、カラフルなご飯すらも見えない。

しかし、みんなの協力があり、彼は子ども(ピーターパン)に戻るんだけど、それがあまりにも子ども。いたずら好きで言うことを聞かない。とある理由で大人に戻るんだけど、あぁ、これが大人ってことなのかな?って少し思う。


さて、『ビッグ』の話。

ビッグはむしろ心は子どものままで、体だけが大人になってしまう物語。

12歳のジョシュは、友だちのシンシアに淡い恋心を抱いているけどうまくいかない。背が低いことをジョシュは子どもながらにとても気にしていて、移動遊園地にあったゾルダー(占い機的なやつ)に「大きくなりたい」と願いを込める。すると次の日、ジョシュは大人になっている。というのがあらすじ。

まず言っていい?

移動遊園地羨ましい!!!!

日本では見かけないものって本当にわくわくする。しかもあの不気味なゾルダーって機械は、今でもアメリカに設置されてるポピュラーなものだそうです。

いや、不気味だわ。笑

でもいつか海外で見かけたら、絶対やっちゃいますよね。

でも間違っても子どもに戻りたいとか、願わないようにしないとな。笑

まず、すごいなと思うのは、トムハンクスの子ども(ジョシュ)としての演技!

大人になってしまったジョシュは、なんやかんや親友(もちろん子ども)の力を借りておもちゃメーカーの仕事を得るのだが、子どもだから忖度を知らない。素直の代名詞とも言えるジョシュがおもちゃの開発会議に現れる。

開発中のビルのおもちゃをガチャガチャ動かして、「何がおもしろいの?」と言うその素直さや表情は、子どものそれにしか見えない。

©1988 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

そしてビッグの有名なシーンといえば、おもちゃ屋さんにある大きなピアノで社長と遊ぶところである。ものすごく真剣にピアノで遊ぶ姿が、大人が子どもの心で遊ぶそれではなく、まさに子どもが遊んでいる遊び方なんだよな。


SNSで見かけた動画で、大人(20歳より上くらいかな)に『女の子の走り方をしてください』と言ったところ、みんな、女の子走り(手を横に振ったり、足を外に跳ね上げたり)をした。

そんな中、本当の10歳くらいの女の子に走ってと言うと、みんな全力で走るのです。誰も女の子走りをしない。

私が演技をする時って、生きている中で得てしまった潜在的情報を表に出してしまいがちになるけど、トムハンクス演じるジョシュは子どもそのもの。さっきで言うと本当の10歳の女の子が走る走り方をする感じ。本当の子どもは女の子走りなんてしないでしょ?全力で走るでしょって。

おもちゃ屋さんでカバンをボール代わりに蹴ったり、親友とおもちゃ屋さんで銃に当たったフリをして転げ回ったり。

遊び方や、体の使い方が大人の動きではない気がする。

ひとり暮らしの部屋を借りて、トランポリンを置いたり、おもちゃばかり広げて、飲み物はジュースばかり。ん...、正直これは大人の私から見ても夢のような部屋だわ。笑


ヒロインの話をすると、エリザベス・パーキンス演じるスーザン。

ジョシュと同じ会社のとても魅力的な女性なのだが、12歳くらいから見たら、「おばさん」と言われてしまうのが、なんというか悲しい。

ジョシュは恋愛など全く考えておらず、スーザンを部屋に招いても、一緒にトランポリンで遊んだり、部屋に泊まることになっても、二段ベッドでバラバラで寝たり。

二段ベッドといえば、壮大な争いがおこるほど、上段をとりあうのに、ジョシュは気を遣って二段ベッドの上段を譲ろうとする。女性に対して彼なりの、なんだか可愛らしい気遣いを見せてくれる。


なんやかんやあって、ジョシュとスーザンは恋に落ち、愛を育むのですが、ここからがすごい。あの、どうみても少年だったトムハンクスの表情が、大人になるんです。

セクシーなシーンで、スーザンが電気を消しても、ジュシュがつける、なんてことをしていたのに。

「大人の顔」になるんです。これが本当にすごくて。もちろん、気持ちが大人寄りになってしまっているんでしょうけど。

立ち方や歩き方、(英語わからないけど)話し方も何か違う。

これが、大人と子どもの違いかって明確な切り替えってわからないけど、確実に「大人」。

こればかりは、本当に衝撃的。

親友との遊びを断り、仕事を優先させ、恋人を大切にする。

んー、なんとも言えない悲しい大人感。

大人ってこんなに優先されるべき大切なものが変わるのかしらね。

あと最後のシーン、

最後、ジョシュとスーザンが別れる時。

スーザンの車で(大人)ジョシュは自宅へ送ってもらいお別れをする。

スーザンは元恋人を見送り、一瞬顔を背け、もう一度ジョシュを見る。

そこには(子ども)ジョシュがいる。ダボダボのスーツを着て。

スーザンのさっきまでの表情は、恋人を見送る女の顔だったのが、一瞬にしてお姉さんのような、子どもを見送る顔になる。

これも物凄く素敵な表情の変化で、この一瞬のシーンで「愛おしい」の形を2つ見せてくれた。


みなさんは大人になるってどういうことだと思います?

子どもの頃にビッグを見た時、とても面白いけど感動はしなかったのに、

20歳を超えるあたりから、感動に変わり、大人の考えを理解していった。

どんな生活をしているか、結婚しているか、仕事しているか、何歳か。

それでビッグの見方は何通りにもなるよね。


また数年後に見て、どう感じるのだろうか。

もしいつか母親になったら、ジョシュの母親の方にフューチャーしそうだなぁ。

なんて思ったり。

ま、なんやかんや今年も終わっちゃうけど、年末年始はお家にこもって映画三昧かしら。

マネージャーに教えてもらった『34丁目の奇跡』をまずは見て、ハッピーになろう。


みなさんは何を見て、何を感じるかな?

気になります...♪

©1988 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

片山萌美 女優

第44回「ミス日本ネイチャー」。グラビアで注目され、現在はTVドラマや舞台、映画と幅広く活躍中。

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