横浜の2スクリーンミニシアター「横浜シネマ・ジャック&ベティ」 ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょう with 花柳のぞみ

ミヤザキタケル
花柳のぞみ

映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪

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今回は、横浜・黄金町駅から徒歩5分の老舗ミニシアター、「横浜シネマ・ジャック&ベティ」にお伺いしました!

中華街、赤レンガ倉庫、山下公園、ランドマークタワー、八景島シーパラダイス、ラーメン博物館、動くガンダムetc…。名だたる観光スポットがひしめき合う人気スポット・横浜。その街の名を耳にして真っ先に思い浮かぶものは人それぞれに異なりますが、本コラムを通して新たにインプットしていただきたいのが、横浜駅から3駅、黒澤明監督の『天国と地獄』のロケ地としても有名な黄金町(駅)から徒歩5分、昨年末に30周年を迎えたばかりの老舗映画館「横浜シネマ・ジャック&ベティ」である。

前身となる「横浜名画座」がオープンしたのが1952年。邦画作品や監督・俳優の特集上映などが行われる劇場であったが、建て直しによって1991年にリニューアル。現在の「シネマ・ジャック&ベティ」が誕生した。角張った内装と青いシートが印象的なスクリーン「ジャック」、丸みを帯びた内装と赤いシートが印象的なスクリーン「ベティ」と、趣の異なる2つのスクリーンを有している。

2007年より支配人を務める梶原さんに話を伺うと、その特徴的なネーミングは設立当時の支配人によって名付けられたものであるとのこと。チャンバラや西部劇などを男性向け作品として「ジャック」で上映し、ラブストーリーなどを女性向け作品として「ベティ」で上映。カップルが映画を観に来た際、一緒に同じ作品を観るも良し、それぞれ好きな作品を観て鑑賞後に落ち合うも良し。そんな自由な映画の見方を提案したいという計らいから、誰もが知る横文字の名前(当時の英語の教科書などでメジャーであった名前)を用い、「横浜シネマ・ジャック&ベティ」と名付けられたのだ。ジェンダーレスな現代においては明確な棲み分けはされておらず、シネコン主流の横浜エリアにおける数少ないミニシアターとして、上映する意義や価値を見出すことのできる多種多様な作品が上映されている。

また、劇場へ足を運ぶお客さんとの交流や、街の活性化に重きを置くジャック&ベティの館内には、上映される作品の掲示物をはじめ、劇場近くにあるパン工房カメヤから仕入れているパンの販売の他、「映画半券サービスMAP」という近隣エリアの飲食店をお得に利用できるチラシが配布されており、映画の鑑賞前後の時間を有意義に過ごすための創意工夫がなされている。飲食の持ち込みが厳禁な映画館が多い中、持ち込みOKというところもお客さん思いである。中でも印象的なのは、毎月1日「映画の日」に劇場1Fの横浜パラダイス会館にて開催されている交流会「ジャック&ベティサロン」。上映作品の感想や劇場への意見、今後上映して欲しい作品などをお客さんと語り合う場となっており、映画好きが集まることのできるコミュニティを運営している。

映画館で映画を観た後、誰かと語り合いたくなった経験があなたにもありませんか?そういった経験がある方にとって、絶好の機会であること間違いなし。オンラインでの参加もできるので、他県にお住まいの方であっても参加OK。身近に映画の話をできる人が少ない、ジャック&ベティに行ってみたいけど遠い、そんな方がいましたら、「ジャック&ベティサロン」に参加してみてはいかがでしょう。

支配人の梶原さん

そして、映画監督や俳優をゲストに招いての舞台挨拶や、トークイベントが頻繁に開催れているのもシネマ・ジャック&ベティの魅力のひとつ。サイン会が行われることもしばしばあり、監督や俳優と直接コミュニケーションを取ることができるのは映画ファンとして嬉しいところ。昨年末に公開がスタートしたシネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画『誰かの花』は、絶賛する映画関係者が続出するほか、映画ファンの口コミによって大きく話題に。都内の上映館では度重なる上映延長が行われ、現在も全国各地で順次上映中。監督を務める横浜出身の奥田裕介監督もまた幼少期よりジャック&ベティに通っていた一人であり、ジャック&ベティによって築かれた縁が結実した作品と言っても過言ではないだろう。30周年イヤーであるシネマ・ジャック&ベティでも定期的に再上映されるので、未見の方は要チェック!

映画ファンは元より、映画人や地元の人々からも親しまれ、映画と人、映画と街とを繋ぐきっかけを多数生み出しているシネマ・ジャック&ベティ。日頃シネコンへ足を運ぶ機会が多い方にとっては、レトロな佇まいが逆に新しく、映画愛・映画ファン愛に満ちた空間は、きっとあなたの心を満たしてくれることだろう。神奈川にお住まいの方はもちろんのこと、他県にお住まいの方も、横浜へお越しの際には是非一度「横浜シネマ・ジャック&ベティ」へ足を運んでみてください。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪

花柳のぞみ

ここからは、花柳のぞみが「横浜シネマ・ジャック&ベティ」の見逃せないところをご紹介します。題して、

「はなやぎのビビっとポイント!」

階段を上がって振り向くとドドン!と大きな絵が…。こちらはかつて隣にあった劇場・横浜日劇の絵で、横浜松坂屋さんに飾られていたものを、閉店時に譲り受けたものとのこと。こうして歴史は受け継がれていくんだなぁ...(しみじみ)

なんとお手洗いのマークがジャックくんとベティちゃんではありませんか!!此処にしかない魅力を発見すること、これぞミニシアターの醍醐味。

こちらはフード&ドリンクとグッズコーナー。ジャック&ベティオリジナルのサイダーを片手にご満悦な表情の私とミッキー♪

様々なフライヤーコーナーを紹介してますが、ジャック&ベティも是非紹介したい!「待ち時間もワクワクして欲しい」と、読み物や映画紹介コーナーが豊富なんです♪

ミヤザキタケル

花柳さん、ありがとうございます! 「横浜シネマ・ジャック&ベティ」にはまだまだ魅力的なところがたくさんあるので、ぜひみなさんも探してみてくださいね。 次回はどんなミニシアターにお会いできるでしょうか。 ぜひお楽しみに♪

ミヤザキタケル みやざきたける|映画アドバイザー 1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

花柳のぞみ はなやぎのぞみ|俳優 1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。

記事内写真 / 花柳のぞみ
文 / ミヤザキタケル

今回の記事を含む、ミニシアター限定のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」8月号についてはこちら。
⇒DOKUSOマガジン8月号(vol.11)、8月5日発行!表紙・巻頭は『さかなのこ』沖田修一監督×のん!


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ミヤザキ タケル 映画アドバイザー

1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

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