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最初から最後まで「何だこれ?」『猫と塩、または砂糖』は変な感情になったときこそ観てほしい作品

DOKUSOマガジン編集部

DOKUSO MAGAZINEが注目する俳優をご紹介する本企画。第10回に登場するのは吉田凜音さん。アーティスト活動と並行しながら、2018年に映画「ヌヌ子の聖★戦 HARAJUKU STORY」に出演し、ロシア・第8回ザバイカリスク国際映画祭主演女優賞受賞。その他、『妖怪人間ベラ』、『TOKYOドラゴン飯店』、『藍に響け』など数々の作品にも出演。2022年7月23日より公開の『猫と塩、または砂糖』では、父のための白くて無垢なアイドルとして生きる美少女・絵美を熱演。台本を読んだときの印象と役づくり、小松孝監督の演出方法などをお聞きしました。

吉田凜音
よしだりんね|俳優・アーティスト
2000年生まれ、北海道出身。歌とラップを織り交ぜたセンスフルな楽曲と、キュートでポップな世界観が魅力を放ち、ライブではダンスも注目されているアーティスト。映画やドラマ、CMなどでも活躍し、2018年『ヌヌ子の聖★戦 HARAJUKU STORY』でロシア・第8回ザバイカリスク国際映画祭主演女優賞受賞。主な出演作に映画『妖怪人間ベラ』、『TOKYOドラゴン飯店』、『藍に響け』がある。

©2020 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF

ー映画『猫と塩、または砂糖』は、ふたつの家族、計5人が奇妙な同居生活の中で、それぞれの“幸せ”を探求する様を描く物語です。初めて台本を読んだとき、どんな印象を受けましたか?

「台本を読んだときの率直な感想は、“何だこれは?”です。(笑) どういうことだろう…、わけがわからない…。そんな感情になる台本は初めてで、小松監督は何を考えているんだろうと思い、頭の中を覗いてみたくなりました」

ー社会を拒み、母のペットの“猫”として暮らす佐藤一郎役に田村健太郎さん、一郎の母役に宮崎美子さん、父役に諏訪太朗さん、そして吉田さん演じる絵美の父役に池田成志さんと、ベテランの俳優が脇を固めています。撮影中のみなさんは本作をどのように感じていたと思いますか?

「直接聞いてはいないのですが、みなさんの様子を見る限り、私と同じように“何だこれは?”と思っていたはずです。(笑) でも、撮影前に小松監督の頭の中にある絵美のイメージを聞いたら、役が馴染んでいったことを覚えています」

ー絵美は口数が少なく、感情を表現することが難しい役です。お父さんのために生きる、人形のような印象を受けました。小松監督は絵美に対してどのようなイメージを持っていたのでしょうか?

「絵美はお父さんのために、白くて無垢なアイドルとして生きる女の子という設定なので、人形のように見えるかも知れませんね。小松監督からは、主に絵美の話し方について演出をいただきました。絵美は感情を表にださない女の子なので、クセのない喋り方を徹底したことを覚えています」

ー絵美の白い衣装も印象的です。個性的な登場人物の中で、ひときわ目立つ存在に映っていました。

「絵美の白さも、小松監督の頭の中にあったイメージです。白は絵美のかわいらしさや無垢な人間性を表す色。撮影中は照明部の方と細かく打ち合わせして、より白く見えるようにライティングにもこだわっていました。そのこだわりが、絵美のキャラクターをわかりやすいものにしたと思います」

©2020 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF

ー撮影現場では女優ライトならぬ、絵美ライトがあったんですね。(笑) 吉田さんが考える、絵美のイメージも教えてください。

「絵美はお父さんから言われるがままに生きてきた、感情を失いつつある女の子です。感情を表にださないという意味では小松監督のイメージと同じなのですが、撮影が進むにつれて、意外と感情がある女の子なんだなと思うようになりました。お父さんと2人で過ごしていたときは感情を抑えていたけれど、一郎の家族と出会い同居生活をすることによって、殻が少しずつ破れ、感情を表現するようになるんです。そのきっかけとなる、一郎の部屋でのシーンは、ぜひ注目してください」

ー一郎と絵美は家族でもない、独特な関係ですよね。絵美にとって一郎はどのような存在だと思いますか?

「兄妹でも恋人でもない、年齢の近い異性でしょうか。絵美はお父さん以外の異性を知らずに生きてきて、ある日突然、一郎という同世代の異性と過ごすようになりました。絵美は一郎の不器用な優しさや、絶妙な距離感が嬉しかったと思います。過保護なお父さんと違い、新しいことを教えてくれて、寄り添ってくれる存在ですね」

ー完成した作品を観て、最初に感じた「何だこれは?」という感情はどのように変化しましたか?

「撮影中は作品を理解したつもりだったのですが、作品を観たときにまた“何だこれは?”の感情が戻ってきました。(笑) でも、撮影前に感じたものとは違い、小松監督にしかつくれないという意味の驚きです。『猫と塩、または砂糖』は一癖どころか二癖も三癖もあるからこそ、誰にも共有できない変な感情になったときこそ観たい作品になっています。俳優・吉田凜音と、この世界観を表現できる小松監督のファンが増える作品になったら嬉しいです」

©2020 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF

『猫と塩、または砂糖』
監督・脚本・編集 / 小松孝
出演 / 田村健太郎、吉田凜音、諏訪太朗、池田成志、宮崎美子
(C)2020 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF

あらすじ
僕の職業は、猫である。いい大学、就職、出世、結婚、子育て、マイホーム……社会の多数派の常識が指し示すそれらの“幸せのベクトル”に背を向け、自主的に母のペットとなった32歳の僕。アル中の父、慎ましい母とともに実家で淡々と暮らしていたが、突然、母の元カレで金持ち紳士風の男とその娘の“白いアイドル”が同居することに。狭いひとつ屋根の下、5人それぞれが幸せを求めて右往左往する中、僕が選んだ生き方とは……。

映画『猫と塩、または砂糖』公式サイト
https://www.nekoshio.com

撮影・文 / 大川竜弥

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