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芋生悠×外山文治 ─ 『ソワレ』以来、2年ぶりの再会 外山文治監督の「きとらすばい」

外山文治

外山文治監督が、これからの映画シーンで活躍する高いポテンシャルを持った「きとらすばい(きてるぞ!)」な俳優をご紹介します!

「きとらすばい」とは九州地方の方言で「きてるぞ!」という意味だ。映画界には「あの人、次に来るよね」というネクストブレイクを予感させる俳優がいて、ほとんどの子は風に乗ってエンタメの中心部へと羽ばたいていく。本コラムではそんな「きとらす俳優」の魅力と素顔を私なりに紹介していきたいと思う。初回のゲストは拙作『ソワレ』でオーディションからヒロインに選ばれた芋生悠さんだ。

「2年ぶりくらいかな。髪どうしたの?」
「切りました。オン眉、よくないですか。あはは」

久々に再会した芋生さんは、不二家のペコちゃんみたいなオンザ眉毛で現れた。スクリーンの中で見せる憂いある印象とは違い、にこにこと笑みを浮かべる。現在はシアターコクーンの舞台で天海祐希さんの娘役を演じているらしく、まさに「きとらす」ムードが漂う。

「自分がきとらすかどうかはわからないけど、一生懸命やってます。『ソワレ』以降は『ひらいて』やって『牛首村』やってドラマと舞台やって」
「きとらっしゃあね。ボートレースのCMもよく流れてる」と、私は親戚みたいな気持ちで彼女の快進撃を褒めたたえる。しかしお伝えしなければならない事もあったりもして。

「実は自分の映画に出てくれた俳優のその後の出演作って見れないんだよね。だから活躍を噂で知ってるだけ。でも嬉しい。色んな人から情報がきて、虹郎君も朝ドラに出てるらしいって。芋生さんのドラマも録画はするんだけど……」
「そこまでしてくれて、なんで見れないんですか?」
「わかんない。嫉妬でもなくて、ただ次に現場で会った時を楽しみにしてるだけです」
「石橋夕帆監督とか、めっちゃ追いかけてくれてますよ」
「だからそういう監督の方が俳優から人気が出る」

あはは、と芋生さんは笑う。会話はいつも彼女の笑い声で終わる。そういうところも含めて人間的な魅力なのだろう。ところで、なぜ彼女は女優を目指し芸能界にきたのだろうか。

「確かにそういうの話したことないですもんね。いつも役柄のことばかりで」
「どんな憧れがあったの?」
「憧れはなかったんです。この世界に入る前、覚悟を決める前は、ただここから逃げたいって思ってた。田舎とか、人との関わりとか。目の前の現実とは違うところに行きたかった」
「俺も学生の頃は田んぼ見つめて“こりゃ終わるな”と焦ってた。虫しかいねえなって」
「でもその後、美術や絵に没頭できて、本気で打ち込んだら女優も出来るかもしれないと思った。ただ東京に来てみると、こっちも大変で。あの頃は夢見てたんだって分かりました」
「これからやってみたいことは?」
「韓国とかアメリカとかでも活動してみたい。韓国映画は予算も時間もある撮影現場で羨ましいですよね。向こうは俳優の育成期間も長いし、実力ある人がいっぱいいる中で、それでも対等に仕事したい。実際に経験してみたいです」

芋生さんはこの二年間で視野が外に向いたのだと思う。四十代になり自分の器が見えてきた私にとっては羨ましくもある。可能性を広げ続ける秘訣はあるのだろうか。

「諦めたくないだけですね。私だってあと一歩ってところでダメなことが多いけど。諦めたくない。あとは縁と運ですかねえ…うん。運かなあ。うん。運。うん?うん。あはは」

屈託なく微笑む芋生さんをこれからも応援せずにはいられない。上京して一つ一つの仕事を点から線へと繋げ続けてきた努力と才能が満開の花を咲かせるのは、きっともうすぐだ。

外山文治
そとやまぶんじ|映画監督
1980年9月25日生まれ。福岡県出身。短編映画『此の岸のこと』が海外の映画祭で多数上映。長編映画監督デビュー作『燦燦ーさんさんー』で「モントリオール世界映画祭2014」より正式招待を受ける。2020年、豊原功補、小泉今日子によるプロデュース映画『ソワレ』を公開。「第25回釜山国際映画祭」【アジア映画の窓】部門に正式出品される。

芋生悠
いもうはるか|俳優
1997年12月18日生まれ。熊本県出身。2014年『JUNON Girls CONTEST』ファイナリスト。15年に女優として活動を開始。映画、ドラマ、CM、舞台など多数出演。近年の主な出演作品に、映画『ソワレ』、『ひらいて』、『牛首村』、ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」、CM「BOAT RACE 振興会」、舞台「広島ジャンゴ」などがある。

撮影・文 / 外山文治

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