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映画『さがす』井手プロデューサー対談(前編):新しい才能と世界を目指す!?「CINEMUNI」プロジェクトとは

たまい支配人

映画『さがす』の勢いが止まらない!5/16現在で約6万5千人が来場、興行収入も9,000万円近くに到達し、公開から約4か月が経つが、いまだロングラン上映を続けている。そんな『さがす』を第1弾作品として構える、アスミック・エースとDOKUSO映画館による次世代クリエイター映画開発シネマプロジェクト「CINEMUNI(シネムニ)」とは一体なんなのか?

『さがす』のプロデューサーであり、「CINEMUNI」プロジェクトの立役者であるアスミック・エースの井手陽子さんと、DOKUSO映画館代表のたまい支配人が対談喫茶しました。

編集部:そもそも、「CINEMUNI」ってどんなプロジェクトなんでしょうか?

井手:新しい才能が活躍できる映画作りの場をつくり、一緒に世界を目指していきたいというアスミックとDOKUSOの2社の強い想いから始まったプロジェクトですね。
実は、アスミック・エースとして、ここ何年も新しい監督がデビューしにくい映画業界の状況に対し、何かできないかという想いがありました。どうにかこの状況を変えることはできないかと模索をしていましたが、コロナまで来てしまった。
そんな折に、DOKUSOさんが「DOKUSO映画館」をはじめ、まさにインディーズの監督をどうやって商業へ引き上げようかと考えていらっしゃること、同じ志を持たれていることを知りました。

たまい:そうですね。必ずしも商業映画がインディーズ映画よりも優れていると考えてはいないのですが、ぜひ一度商業の世界を体験してほしい、そのための階段をつくっていきたいという想いはずっとあります。

井手:ちょうど我々も、片山慎三監督という才能を商業映画として、どう世にだしていくか悩んでいたタイミングでした。2作目の長編映画にして商業デビュー作、しかもオリジナル脚本で、興行的に成功させるというのは本当に簡単ではない時代なので。
片山さんの作品の開発を進めていきながら、1作で終わるのでなく、様々な監督が出発していく「場」のようなものを一緒に作れないか、というのが始まりですね。

たまい:僕の感覚だと、アスミックさんが突然持ってきてくれた企画という印象があるのですが。

井手:いやいや、違いますよ(笑)。
私自身は、このプロジェクトを提案しにいくまで、DOKUSO映画館さんとの直接的な関りはなかったんですけど、アスミック・エースとしては、2020年11月公開の『おらおらでひとりいぐも』や、他作品でご一緒する機会がありました。そのときに、弊社の取締役たちとの会話の中で、DOKUSO映画館さんより「熟練の監督の作品も良いのですが、アスミックさんとは新しい監督と新しい企画をやりたいですよね」という一言があったと聞いていて。

たまい:あ、それはお話した気がします。

井手:そうでしょ、言ってるでしょ。なんか、突然持ってきたことになってる(笑)。
その言葉があって、自分たちと同じ想いを持ってる会社がいらっしゃる、と感じたことが一番大きいですね。

たまい:それで、片山さんの企画を持ってきてくれるなんて。よくもまあ、こんな良い企画をウチに持ってきてくれたなと。

井手:アスミックって、2000年前半くらいまでは、監督のデビュー作を手掛けることも多かったんです。宮藤官九郎さんや蜷川実花さん、三木孝浩さんなど。
私は転職でアスミックに入社した人間ですけど、入社前はアスミック・エースが、そういった新たな才能を世に出しヒットさせていたことが素晴らしいなと思っていました。そのスピリッツは、代替わりしていっても脈々と受け継がれていて、その想いと現状の間でもがいていたこともあって。そこに、玉井さんの言葉が響いたんですよね。

たまい:本当にこのご時世で、デビュー作のオリジナル作品に、ある程度の製作費を用意するのって簡単ではないじゃないですか。製作サイドの覚悟が必要になる。

井手:そうですね。

たまい:そんな中で、決して大きな予算ではありませんが、今回『さがす』を商業映画として世に出せる分だけご用意できたのは、良かったですよね。

井手:そうですよね。予算は、常に脚本に紐づくものでして、企画によって変動しますが、『さがす』という、本当に面白いオリジナル脚本を映画化できたのは、本当に良かったです。
だんだんプロジェクト初期のこと、思い出してきました。

たまい:僕も思い出してきました。

編集部:面白い立ち上がりですね。付き合いはじめのどっちが告ったんだ、そっちが告ったんでしょみたいな、二人がなあなあで付き合ったみたいな感じで。(笑)

井手:あるあるですね。「俺、そんなこと言ったっけ?」とか。本人は言いこと言っていたのに、すっかり忘れてるパターンですね。こちらには、思いっきし刺さってるのに。(笑)

編集部:面白かったです。(笑)
次は、「CINEMUNI」というプロジェクト名についてお聞きしていきたいです。

たまい:どういう経緯でつけたんですか?「CINEMUNI」って名前は。

井手:なぜ、質問します?!一緒につけたでしょ、あなた!
意味としては、独創的(UNIQUE)で、世界(UNIVERSAL)に響き、クリエイターと観客をひとつにする(UNITE)のそれぞれの頭文字である“UNI”と、唯一無二の“無二”、それに映画(CINEMA)を組み合わせた造語として「CINEMUNI」としました。 「CINEMUNI」にたどりつくまで、いくつくらい案出ししましたかね?

たまい:まさに100本ノックでしたね。なかなかに難産でした。

井手:お互いの出自が違うから、出てくる言葉が違いましたよね。現場の有志のメンバーで名前を考えていく中で、自分たちが大切にしたい想いはここにあるんだなとか、プロジェクト名を考える過程が、このプロジェクトの在り方を改めて考える良い機会になりましたね。

たまい:すごく良かったですよね。あの時に集まったメンバー全員が「このプロジェクトは何のためにやるのか?」をすごく考えて。結果、そのまま『さがす』の劇場公開の準備に入ったので、みんなが同じ熱量で、足並みそろえて作品にも向き合えたなと思っています。

井手:たしかに。

たまい:製作委員会の会議で、メンバー全員がこんなに熱くなっているのは珍しいなと思いながら毎度会議に参加していました。

井手:そうですね。製作委員会も色々な形がありますが、小さい規模の製作委員会は密なチームになれるのが良いですよね。お互いに意見を前向きに言い合える環境になりやすかったです。

©2022『さがす』製作委員会

たまい:今回は規模が小さいこともありますし、製作委員会の会議の手前で、自分たちのセンスを賭けて何度も「CINEMUNI」のネーミング会議をやっていたから、製作委員会の会議も自然と意見をだしあって議論していくかたちになりましたね。

編集部:「CINEMUNI」のネーミング会議は私も参加しましたが、先生に見せる度に「違う!やり直し!」と言われる習字の時間のようでした。何回書き直すんだ、という。

たまい:お互いにね。お互いに相手の案がピンとこなくて。(笑)

井手:最初の想いは同じはずだったのに、なんでこんなに嚙み合わないんだと。(笑)

たまい:でも、お陰様で僕自身もすごく考えましたし、最終的に決まったときには連合軍になったというか、ひとつ乗り越えたみたいな感じがありましたね。

井手:アスミック・エースのメンバーは新しいものとか、独特なものとか、個性あるものがすごく好きで、プロジェクト名にもそれを求めるんですよね。御社はWEBサービスで勝負していることも関係しているのか、伝わりやすさとか浸透しやすさを重視していて。それはどっちも大事なことで、その結果このプロジェクト名が生まれたみたいなところはあったと思います。

たまい:今のDOKUSOの仕事もそうですが、前職を引きずっている部分もあるかもしれません。僕は広告代理店でしたし、他のメンバーはテレビ業界だったり、ライター・編集をやっていたり、ウチは「伝える」「記憶に残る」ことを重視する人間が多いので。その違いがすごくありましたよね。

井手:面白かったですね。

たまい:本当に不思議な感覚でした。ウチの会社内で「この案めっちゃいいじゃん!」となって会議で提案すると、アスミックさんがポカーンとしてて。

井手:お互いにそんな感じでしたね。でも、お互いに言葉を商売にしてきたというか、うちのメンバーもたくさん案を出しましたけど、御社からもいっぱい出てきて。納得いくまでとことん100本ノック文化は一緒だなというのがありました。

たまい:お互いに相手の案にケチをつけるわけではなくて、自分たちが考えているものをとにかく見せ合って尊重し合うというか。
でも、お互いそれなりに自分たちのセンスに自信を持って出すけど、まったくかすらないという。

井手:本当にかすらないんですよね。(笑)
最終的に「CINEMUNI」という言葉で、みんなが納得できたことも含めて、わかりやすくて独特で個性的なものになって良かったなと思います。
(後半に続く)

映画『さがす』井手プロデューサー対談(後編):『さがす』で模索した海外に挑む制作現場の作り方

©2022『さがす』製作委員会

CINEMUNI第1弾作品『さがす』絶賛公開中!
https://sagasu-movie.asmik-ace.co.jp/

『さがす』
監督・脚本 / 片山慎三
出演 / 佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智 他
©2022『さがす』製作委員会

【あらすじ】
「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」
大阪の下町で平穏に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかし、その翌朝、智は煙のように姿を消す。
ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、父をさがし始めるが、警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。それでも必死に手掛かりを求めていくと、日雇い現場に父の名前があることを知る。「お父ちゃん!」だが、その声に振り向いたのはまったく知らない若い男だった。
失意に打ちひしがれる中、無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る楓。そこには日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった――。

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井手陽子|プロデューサー
アスミックエース㈱映画事業本部編成製作部所属。08年に入社後、映画製作に携わる。主なプロデュース作品に『マエストロ!』(15)、『君と100回目の恋』(17)、『羊の木』(18)、『長いお別れ』(19)、『サヨナラまでの30分』(20)、『さがす』(22)などがある。

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