『猫は逃げた』今泉力哉監督 ✕ 毎熊克哉 特別対談

DOKUSOマガジン編集部

『街の上で』の今泉力哉監督と『アルプススタンドのはしの方』の城定秀夫監督が、お互いに脚本を提供し合い、R15+のラブストーリーをそれぞれ制作するコラボ企画「L/R15」。一匹の猫を中心に、四人の男女の思惑が交錯するさまを描いた『猫は逃げた』で初タッグを組んだ今泉監督と主演の毎熊克哉に、現場での互いの印象や作品の裏側について語ってもらった。

毎熊さんとはいつかご一緒したいと思っていた。とても信頼できる方。──今泉力哉

今泉さんの演出は細かい。独特な優しさというか、気遣いがある。──毎熊克哉

めて一緒に映画作りに取り組んだ感触

今泉:毎熊さんのことは『ケンとカズ』で知って、当時の上映の際にご挨拶していました。それからいろんな作品で観てきて、いつかご一緒したいと思っていたんです。
特にこの“L/R15”の企画でタッグを組んでいる城定さんの作品に出演されているのも観ていましたし、“広重役はぜひ毎熊さんにお願いしたい”とプロデューサー陣に話していました。実際に一緒に取り組んでみて思ったのは、とても信頼できる方だということ。亜子役の山本奈衣瑠さんはお芝居の経験が少ないはずですが、相手が毎熊さんだったからか、すごくやりやすそうでした。二人で物語の中心に立ってくださいました。

©2021『猫は逃げた』フィルムパートナーズ

毎熊:面識はありましたので、今泉さんの佇まいでしたり、お話しする感じから、もちろん作られた映画からもそうですが、優しいイメージは持っていました。実際にご一緒させていただいた印象は、そんなに変わっていませんね。
ただ、「あっ、監督だ」とは思いました。(笑) それまでは撮影現場ではないところでしか話したことがなかったので、初めて現場でお会いして、やっぱり頼りがいがあり、凛々しかったです。俳優部と接するときの今泉さんと、スタッフさんと接しているときの今泉さんはまた違うとも思いました。ご自身のこだわりを的確に伝えるために、毅然としています。それと、現場での今泉さんは、思ったより明るかったですね。(笑)

泉監督ならではの演出術

毎熊:今泉さんの演出はとても細かいと思いました。本作は“猫の映画”でもあります。僕が演じた広重は猫を拾うシーンで煙草を吸っているのですが、最初はくわえ煙草の状態で猫に触れにいく芝居をしたんです。それに対して今泉さんが、“生き物を前にして、煙草の煙は気になるなあ”と仰って、今泉さんらしいなと。独特な優しさ、気遣いといいますか。たしかに煙草をどうするかは僕自身も気になっていたのですが、猫に煙を与えないように配慮するというのは頭の中になかった。広重のキャラクター性にも関わってきますし、どっちでもいいと言えばいいけれど、でもどっちでもよくない。こういうところをすごく大切にされている監督です。

©2021『猫は逃げた』フィルムパートナーズ

今泉:毎熊さんにかぎらず、あまり役者さんの演技に細かい指示をすることはないですね。役者さんが持ってきてくれたものが自分の思っていたものとズレていても、キャラクターとして成立することが多分にあります。正解は一つではないというのが基本的なスタンス。でもやっぱり、この“猫と煙草”のことや、それから、手島実優さん演じる真実子が具合が悪くなって吐いちゃうのに対する接し方など、このあたりは細かく話していますね。キャラクターをどう掴んでいくかというところなので、印象に残っていますし覚えています。ああいったシーンでの間合いや言葉の発し方に、キャラクターが表れると思うんです。

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今泉力哉
いまいずみりきや|映画監督
1981年生まれ。福島県出身。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。2013年『こっぴどい猫』でトランシルヴァニア国際映画祭最優秀監督賞受賞。2019年『愛がなんだ』が公開され大ヒットを記録。近年の主な作品に『あの頃。』、『街の上で』、『かそけきサンカヨウ』などがある。「L/R15」企画『愛なのに』では脚本を担当。

毎熊克哉
まいくまかつや|俳優
1987年3月28日生まれ。広島県出身。2016年、主演映画『ケンとカズ』で毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、高崎映画祭にて最優秀新進男優賞、他多数受賞。近年の主な出演作品に、映画『AI崩壊』、『生きちゃった』、『サイレント・トーキョー』、『孤狼の血 LEVEL2』、『マイ・ダディ』、ドラマ「半径5メートル」などがある。

©2021『猫は逃げた』フィルムパートナーズ

『猫は逃げた』
監督 / 今泉力哉
脚本 / 城定秀夫
出演 / 山本奈衣瑠、毎熊克哉、手島実優、井之脇海
公開 / 3月18日(金)より新宿武蔵野館 他
©2021『猫は逃げた』フィルムパートナーズ

撮影 / 角戸菜摘
取材・文 / 折田侑駿

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