一緒に徘徊してみたい監督はロイ・アンダーソン?【根矢涼香のひねくれ徘徊記 第1回】

根矢涼香

ある時、親友からもらったポストカードが急に壁から落ち、なんとなく連絡をしてみると同じように彼女も寝込んでいた。

“偶然こそが常に最良の助監督”。ベルギー出身の映画監督、アニエス・ヴァルダの残した言葉だ。

初めまして。根矢涼香と申します。連載(憧れの二文字)の依頼をいただいたにも関わらず、「ひねくれ徘徊記」というキラキラしないタイトルをつけてしまいました。

せっかく映画のそばで文章を書けるのだから、新作情報などをお送りできれば良かったのですが、昔から流れを掴むことが大変苦手な性分です。大縄跳びの縄に入るよりその辺にあるイイ感じの石ころを拾い、徒競走では一等賞を狙うよりも最後尾で知らない人に手を振りまくる幼少期を過ごしてきた私です。新しいドラマや音楽の話題、芸能人の結婚ニュースなどは始めの頃こそ振り落とされぬよう大衆のマラソンを走っていましたが、次々と塗り替えられていく“最新”に息切れし、いつしか「自分の時間軸で出会ったものこそが新鮮であり面白い!」という結論に至りました。 ただのあまのじゃくですね。

惹きつけて離さないものなんて世界に溢れていて、例えばそれは、知らない人の家に生るカリンの誘惑。野良猫との攻防戦。なんとなく気になってしまう路地の暗がり。その果実が大して甘くなかろうと、一方的な以心伝心であろうと、行った先でうんこを踏もうと、「糧」という便利なばんそうこうでどうにでもなっちゃいます。何も起こらないなら起こらないでもいい。要はそれが秘めている、可能性にトキメキを覚えるのかもしれません。

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撮影 / 角戸菜摘 スタイリスト / 山川恵未 ヘアメイク / 染川敬子(TOKYO LOGIC) 編集 / 永井勇成 衣装 / ブラウス¥5,850/Wild Lily〈問い合わせ先〉Wild Lily 03-3461-4887

※根矢涼香さんの今回のコラムを含む、ミニシアター限定のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」10月号についてはこちら。
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根矢涼香 俳優

1994年9月5日、茨城県東茨城郡茨城町という使命とも呪いとも言える田舎町に生まれる。近作に入江悠監督『シュシュシュの娘』、野本梢監督『愛のくだらない』などがある。石を集めている。

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