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ほろ酔いで人生大逆転!?『アナザーラウンド』マッツ・ミケルセンが酔っぱらう

ミヤザキタケル

本コーナーでは映画アドバイザー・ミヤザキタケルが、DOKUSO映画館が掲げる「隠れた名作を、隠れたままにしない」のコンセプトのもと、海外の小規模作品から、日本のインディーズ映画に至るまで、多種多様なジャンルから“ミニシアター”の公開作品に的を絞り、厳選した新作映画を紹介します。

『アナザーラウンド』9/3公開

©2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

第93回アカデミー賞にて国際長編映画賞に輝いた、トマス・ヴィンターベア監督×マッツ・ミケルセン主演の人間ドラマ。仕事も家庭もままならず、冴えない高校教師のマーティンは、気心知れた同僚たちとある理論を検証する。

その理論とは、人間の血中アルコール濃度は0.05%が理想であり、その状態をキープすることで体がリラックスし、力と勇気がみなぎってくるというもの。理論の正当性を検証すべくアルコールを定期的に摂取した状態で、授業や家庭に臨むマーティンたちであったが…。

お酒の力を借りて人生をより良き方向へと変えていこうとする男たちの姿は、さながらコメディ映画の様相を呈し、見ているとお酒が飲みたくなる。なにより良い歳こいておバカなことに情熱を注げる中年男性たちの友情にほっこりする。そして、彼らと同じことを試してみたくなることだろう。

©2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

しかし、薄々勘づいている人もいると思うが、そのような理論がこの現実において立証されているわけでもなく、そもそもお酒にトラブルは付き物であり、都合良く人生が激変するはずもない。

初めの内は適度な量のアルコールが功を奏して状況が好転したかのように思えるものの、次第に雲行きは怪しくなっていき、やがて彼らは壁にぶち当たる。

そう、何かに頼ったり依存する形でしか起こり得ない変化では、どのみち限界がやってくる。他力本願ではなく、苦労や努力の末に獲得したものや、自身の内側から生み出されたものにこそ、人生を変え得る程の力が備わるもの。

気付けばコメディ映画的な空気は鳴りを潜め、シリアスな人間ドラマが展開されていく。その過程において垣間見えるマーティンたちの変化や葛藤にこそ、本作の醍醐味が詰まっている。

©2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

物語冒頭において、「青春とは?夢である」「愛とは?夢の中のものである」と、哲学者で思想家のキルケゴールの言葉が引用されているのだが、映し出されていくドラマとキルケゴールの言葉を照らし合わせながら見ていくことで導き出される答えがきっとある。

その答えは人それぞれに異なるものかもしれないし、何が正解ということもないのだが、冒頭において示されるキルケゴールの言葉をしっかり心に刻んだ上で本編を目にしてこそ、ワインのように味わい深い本作の魅力を堪能できることを覚えておいて頂きたい。

お酒との付き合い方を通して、人生について考えるキッカケを与えてくれるオススメの作品です。

『アナザーラウンド』
9月3日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開
配給:クロックワークス
公式サイト:anotherround-movie.com
PG-12
©2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

あなたにとっての大切な一本に、劇場へ足を運ぶための一本に、より映画が大好きになる一本に巡り会えることを祈っています。それでは、ミニシアターでお会いしましょう。

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